-アフターコロナのよげんを考えてみた-
2020年よげんの書は例年通り2020年の1月に発表しました。ところがそこから1ヵ月後にはコロナウィルスによる世界的なパンデミックがじわじわと始まっていたのです。3月くらいになって、1月に発表した2020年よげんの書を書き換えないといけないと思い始めました。そこで3月から、コロナの影響がどのようなところに出て来たのかを調べ始めたのです。
3月〜6月までの情報を整理し、それを踏まえた上で「2020下半期よげんの書」を2020年7月中旬にオンラインセミナーの形で発表しました。そのときに3月〜6月までの出来事から250件位を抽出し整理したものが今回ご紹介する「コロナで何が起こったか?」です。「よげん0」として本編に入る前に前提として解説しました。
よげん0:経済は停滞しても、時代は加速する
コロナ禍によって、人の活動に制限が加わり、経済を始めとする様々なことが停滞します。そのことによって今まで問題点と認識されていながら、先送りされてきた、例えば貧困、格差、差別の問題等が加速度的に膨らみ、大きな問題になってきます。また、すべきこととわかっていながら、手がついていなかったことなど、例えばオンライン診療、テレワーク、オンライン授業、行政のデジタル化などが一気に動き始めたりもします。コロナで何が起こったかを大雑把に捉えるならば「停滞」と「加速」がキーワードとなるでしょう。全体を俯瞰的に見ていきましょう。左上のエリアがスタートです。
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- コロナウィルスの実体がわからぬままに、あれよあれよという間に感染者が増加。一体どうなるのかもわからずに人々の不安が増幅していきます。
- マスメディア、SNSなどを通じて様々な情報が飛び交い、増幅した不安を背景にデマも多数出始めます。インフォデミックの拡散です。この時、デマ情報によって人々が踊らされないように、善意の人々がデマ注意報を多数発信することで、さらにデマが拡散するというパラドックスに陥りました。マスクや消毒用の薬剤が品薄になるのはわかるとして、何故かトイレットペーパー、ティッシュまでも買えなくなるという事態になったのも記憶に残っています。
- 全世界的に勢いが収まらないなか、人々は外出自粛を要請されるにいたります。日本ではロックダウンというところまでは行きませんでしたが、海外ではそういった都市が続出します。
- 新型コロナウィルスの研究が進むにつれ、感染しないための行動様式が徐々に明らかになって行き、公衆衛生上の変化として現れて行きます。ワクチン開発にAIが活用されるなどの変化も起こりました。
- 外出自粛は急速なデジタルソサエティー化を誘発しました。人と人が対面で会いづらくなったため、そのブリッジとしてデジタルの役割が大幅に拡大しました。仕事や医療、教育の分野で一気にデジタルシフトが進みました。10年以上かけて議論しても方向性が出ず、進まなかったオンライン授業も、なし崩し的に始まりました。そして、家族みんなでゲームをするため、任天堂の「集まれどうぶつの森」がベストセラーになりました。
- 人々が移動しないことで経済が停滞します。経済の停滞により、市場が縮小し、失業リスクや倒産リスクが拡大します。経済的な不安が募ることで、生活者は消費よりも貯蓄に向かい、さらに経済が停滞します。投資リスクが増加し、一時的に株が暴落します。そして、デフレへの逆流が始まるのです。
- 経済が停滞することで、工場の操業停止などにより、サプライチェーンの分断が起こります。拡がりすぎたグローバルなサプライチェーンの問題点が噴出し、再構築への模索が始まります。
- 経済が停滞することから起こる様々なリスクを解消するために、各国の政府は巨額の資金を短期間の内に動かします。企業にとっては、資金の調達がしやすい状況が突然生じます。実際に行き場を失うお金が増加し、その資金が株式市場に流れ込み、実体経済とかけ離れた株式相場が出現します。
- 巨額の資金を動かすための意志決定が次々に為され、国家、政府が主役に躍り出ます。政治家がリーダーシップが問われる状況になるでしょう。
- 政府、国家、行政が注目を集める中で、日本ではその停滞ぶりが明るみに出てきました。縦割りで、旧態依然としたアナログ行政。何をするにも時間がかかり、ずさんな委託事業など、先送りにしてきたことがことごとく裏目に出ているような状況です。さらにIT戦略に関してはかけ声ばかりで一向に進まない状況も見えてきています。
- コロナ禍による影響は生活者にも変化をもたらします。大きくはテレワークの急速な普及、先行き不安な状況からの消費行動の変化、そして自宅に引きこもる巣ごもり消費とその反動などが挙げられます。
- 同様に市場にも大きな変化が現れます。一気に衰退する業種や業態がクローズアップされます。企業はコロナシフトとも言うべき対応策を次々と打ち出すでしょう。また、この時期にコロナ特需にわく業界や個別の企業が出現してきます。市場や企業が変わることで労働者の構造変化が起こり、ビジネスのシェアとも言うべき動きが顕在化します。業種を超えて従業員をシェアしたり、工場や事業所をシェアする動きも見え始めています。そして、ウィズコロナの時代に対応する、新たな市場が動き始めます。「無人」「非接触」「新市場・新サービス」をキーワードとした新たなビジネスが生まれます。
- コロナ後の世界への対応として、人々の働き方が変わり、感染対策と経済成長を両立させるためのニューノーマルへの模索が始まります。そのためには経営の革新が必要になり、その目的は持続可能性の追求へと向かっていくことになるでしょう。
- そして、さらに新たな問題が噴出してくるでしょう。パンデミックは自国だけの終息では解決しません。世界中の全ての国が終息しない限り安心は出来ないのです。今後、被害の中心は新興国に移り、その国々で経済が停滞することで、子どもの貧困が大幅に増加します。また、それぞれの国が抱える問題が増幅され、差別や格差などが不安定な要因として今後の世界に大きく影響することになります。非常時に強化された国家の国民への監視体制が平常時にも続く懸念が増大し、全体主義的な政権が勢いを増すことになります。この時期に次々と強攻策を打ち出す中国への警戒感が拡がってくるのも、コロナ後の世界に影を落とします。
そんなわけで、コロナ禍の4ヶ月間に起こったことを整理してみましたが、ここからわれわれは、どのような社会を作って行くのか、どのような企業でありたいのか、あるいはどのような生き方を選択していくのか、を考えて行けたらいいなと思っています。
この前提から「2020年下半期よげんの書」は始まっていくのですが、今日はここまで。またの機会にお話しできればと思います。
※8月下旬〜9月上旬にオンラインセミナーで「2020年下半期よげんの書」のアンコール開催を企画しています。詳しいことが決まりましたらご案内します。